大判例

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東京高等裁判所 昭和25年(ラ)319号 決定

一、当事者

抗告人 甲野一郎

相手方 甲野太郎

二、主  文

本件抗告はこれを棄却する。

抗告費用は抗告人の負担とする。

三、理  由

本件抗告の理由は末尾添付の抗告理由記載のとおりである。

よつて判断するに、一件記録に徴すれば、抗告人は水田七反四・五畝歩、畑二反四畝歩、山林一反六畝歩を所有し農業を営み、妻子、孫等を合せ十人家族の世帶主であるところ、数年前から生業を全く放棄して顧みず、酒色に耽溺し家族の勤労によつて得た農業上の收益を殆んどその費用に充てるのみならず、昭和二十四年頃から所有山林の立木の半分をも他に賣却して酒色の資に投ずる有様であり、兎角家疎んじて外泊し、家計に專念せず、ために抗告人の家族は漸次生活に困窮し、子女の教育の資にも事欠く状況にあることが認められる。然らば抗告人はその資産に相応しない財産の処分、又は負債を負担するものというべく、このまま放置するにおいては、結局その産を破り、抗告人は元より、その家族の困窮に陷入ることは、必然であるから、原裁判所が抗告人を浪費者と認めて準禁治産の宣告をしたことは洵に相当である。

よつて原決定を相当とし、本件抗告を理由がないものと認め主文のとおり決定する。

抗告趣旨

原審判を取消す。

被抗告人より抗告人に対する準禁治産宣告申立は之を棄却す

との御審判相成度候

抗告理由

抗告人は二十歳の折、甲野家にむこ養子し、妻花子との間に三男五女を挙げ、長、次女は嫁入し、三、四女は出稼中にて、現在の家族は、抗告人夫婦に長男と其の妻、孫および次男(十五歳)、三男(十一歳)、五女(十二歳)の八人暮しにて、次男以下は中小学校に在学中なり。家財は祖父來の居宅および田三反歩、畑一反八畝歩、山林原野二反歩の所有地と農地法により昨二十四年小作地を買い得たる田四反歩を耕作し、自作農として生活し、抗告人において家政を執れり。然る処、昭和十八年三月抗告人は神経痛症に罹り、腰部と右足の自由を欠き、今なお過激の労苦に堪えず、兎角して妻の放縱性は愈々募り、家庭の風波絶えず、ために本案を惹起したる次第にして、抗告人には曾つて浪費の事実なし。これ等浪費の具体的関係は記録の末、調査に付判明せざるも、酒色に浪費したることなく、又資産を順次に失いたる事実なく、財産は入むこ当時より増加せるのみならず、現在の経済状況よりして納税其の他の公共負担を始め家族の扶養費も多額に達しおれり。

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